インプラント治療を成功させるにはインプラント体がきちんと骨の中に埋め込まれ、骨の中でインプラント体が安定する必要があります。

しかし、上顎の奥歯は上顎洞と呼ばれる空間と隣り合わせのため、歯がなくなってしまうとインプラント治療をするために必要な骨の幅や厚みが不足することがよくあります。

サイナスリフト（ラテラルアプローチ）、ソケットリフト（クレスタルアプローチ）は上顎洞粘膜と呼ばれる骨に引っ付いている膜を丁寧に剥がして持ち上げ、そのスペースに新しい骨を作る術式です。

①サイナスリフト（ラテラルアプローチ）とは

・上顎洞の横の骨に窓を開けて、直接上顎洞粘膜を見ながら剥がして持ち上げ、骨を作るための材料を填入します。

（当院では事前に採血してプラスチック管のなかで遠心分離して得られたAFG（Autologous Fibrinogen　Glue）をスポンジ状のコラーゲンにかけてガラスシャーレ上で固まったものを填入し、感染する可能性を低くして行っています。）

CGFを利用したグラフトレスサイナスリフトについて

AFGがガラス管の中で硬化したものはCGF（Concentrated Growth Factors)と呼ばれます。ＣＧＦはAFG（フィブリノーゲン）が固まったフィブリンの塊であり、上顎洞にスペースを設けて（スペースメーキング）骨を作るために理想的で安心安全です。上顎洞粘膜下は血液循環が乏しく非常に感染に弱い部位で、このようなところに人工骨の塊を入れることは大きなリスクを伴います。細菌やウイルスすらも侵入できないフィブリンの塊のCGFは、創傷治癒、炎症、血管新生、ECM（細胞外基質：細胞の足場）に関与する糖タンパクの塊です。CGFは感染源にならない為、スペースメイキング材の足場材として理想的です。CGFが骨になるのではなく、CGFによって作られたスペースが骨になっていきます。CGFは洞粘膜が破れたとしても感染を起こさない安全な物質です。

　しかし、CGFの弱点は、固形物ではないということです。

CGFは圧力が加われば、縮小、変形してしまいます。鼻をかんだり、息が激しくなるような運動は上顎洞粘膜に圧力が加わるため術後数日は固く禁止する必要があります。

サイナスリフト費用　75000円～

②ソケットリフト（クレスタルアプローチ）とは

インプラントを埋め込むために開ける小さな穴から上顎洞粘膜を持ち上げて、骨を作る術式です。

　当院では骨の厚みが４～５ｍｍあり、インプラント埋入時に確実に初期固定が得られる症例に行っています。

上顎洞粘膜の挙上量は３～４ｍｍまでとして、直径の大きな短めのインプラントを埋入しています。　

Summers先生は上顎洞粘膜の挙上量が３～４ｍｍの場合、高い成功率であると報告しています。

当院ではソケットリフトでは骨補填材を用いていません。なぜなら、顕微鏡を使用しても上顎洞粘膜の穴の存在を確認することが難しく、上顎洞内に材料を流出させてしまう恐れがあるためです。

Nedir先生らの報告によると、骨補填材の使用の有無でインプラントの生存率に差はありません。ソケットリフト（クレスタルアプローチ)は基本的にインプラントを同時に埋入するため、上顎洞粘膜はインプラント体により挙上されます。その結果、骨補填材の有無に関わらず挙上された空間に骨は形成されます。

ソケットリフト費用　33000円

＊当院では長さ６ｍｍ以上の短いインプラント（ショートインプラント）の使用を多く行っています。インプラントの表面加工の進化により長さ6ｍｍのインプラントであっても十分な骨結合をするとされています。短いインプラントを使用する場合、他のインプラントと連結して生存率を高めています。